武士の不正行為|有明抄|佐賀新聞LiVE
〈武士は食わねど高楊枝(たかようじ)〉。江戸時代の武士は貧しくても、清廉潔白、愚直をむねとして生きた印象だが、決してそうではない者も多かったという。歴史学者の氏家幹人さんが武士の不正行為を紹介している◆当主が死亡しているのに病気療養中と偽り、死者の給料をもらい続ける幕臣がいた。1人の不届き者の不正ではなく、多くの幕臣が1年ぐらいは当たり前のように受給していたという。当然、周囲は知っていて、いわば職場ぐるみの不正だった◆氏家さんは組織的になれ合い、不正を慣例化させていたと解説するが、現代でも時折、役人の不正行為がニュースになる。デジタル庁の審議官が事業者から接待を受けていたとして懲戒処分になった。総務省でも接待問題があったが、いつの時代にも甘い汁を吸おうとする者はいる◆事業者との関係を怪しんでいた人は職場にいなかったのか。消費者庁は行政機関や企業の通報対応体制の指針を示している。来年6月までに改正見通しの公益通報者保護法で体制整備が義務づけられ、通報者を守って不正の情報提供を促す◆氏家さんは組織のなれ合いについて「武士は相身互い」という互助精神の現れと皮肉交じりに書いているが、時代は変わっても組織の空気にあらがい、正しくあるには勇気がいる。私益よりも公益、背中を押す仕組みに。(知)
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