粉飾決算 公認会計士の罪と罰〈上場企業不正60件。不正会計の増加で「監視する側」の責任が問われている〉/松浦新――文藝春秋特選記事【全文公開】 7/27(火) 6:00 配信 「ナイス」前会長逮捕で強制捜査 (c)共同通信社 「 文藝春秋 」7月号の特選記事を公開します。文/松浦新( 朝日新聞経済部 記者) ◆ ◆ ◆ 投資家をだまして資金を集める粉飾決算など、上場企業の不適切な会計処理が、 コロナ禍 のなかでも高水準で続いている。民間調査会社の東京商工リサーチによると、2020年は58社60件あり、過去最多だった19年(70社73件)に次ぐ高水準だった。 今年に入ってからも、東証一部の精密機器メーカー、東京精密で子会社社長による架空発注や売掛金の回収偽装、中堅ゼネコンの大豊建設による水増し発注などの会計不祥事が相次いでおり、依然として減る兆しが見えていない。 粉飾が発覚すると、弁護士や公認会計士らによる「第三者調査委員会」が作られることがある。その調査報告書では粉飾の原因がつぶさに分析されるが、経理上の分析だけでなく、社内アンケートや電子メールの分析にもとづく生々しい人間模様が描かれることもある。そこで、上場企業の不正会計の報告書から、近年の粉飾の実態を見てみたい。 まずは、ワンマン経営者の独善的な要請によるケースだ。 住宅建築会社「ナイス」(旧すてきナイスグループ、本社・横浜市)は2015年の決算を粉飾したとして、19年に平田恒一郎前会長らが逮捕された。今年3月、横浜地裁は平田氏に懲役2年6月(執行猶予4年)の有罪判決を下した。本件の報告書(19年7月)は、平田氏について次のように記した。 同氏は創業家の2代目として1988年に社長に就き、グループ企業の部長以上の人事権を掌握し、独裁体制を敷いていた。例えば、新築マンションが売れ残ると、完売になるまで会議のたびに住宅部門の役員を立たせて謝らせる。「清く、正しく、まじめなナイス」という行動規範の下、自ら定めた「ワイシャツは白」「役員は喫煙禁止」「ゴルフ禁止」などの決まりに違反した役員の降格を命じるといった具合だ。 判決によると、同社は15年3月期の連結決算に架空売り上げを計上。実際は約1800万円の経常損失だったのに、4億9600万円の経常利益があったなどとする虚...
企業は社会において経済活動を支え、雇用やサービスを提供する重要な存在です。しかし一方で、不正行為や非常識な対応が発覚すると、その影響は計り知れません。近年では粉飾決算や情報隠ぺい、従業員への不当な扱い、顧客への誠意を欠いた対応など、数々の企業不祥事が報じられてきました。これらの行為は、経営陣の倫理観の欠如やガバナンスの不備、短期的な利益追求への執着などが背景にあるといわれています。 不祥事が一度表面化すると、企業のブランド価値や株価は急落し、取引先や顧客との信頼関係は容易には回復できません。さらに従業員の士気低下や離職の増加といった内部崩壊も引き起こします。社会における企業の責任は単なる利益追求にとどまらず、透明性や誠実さをもって行動することにあります。 本稿では、過去に起きた企業のトラブル事例を振り返り、その原因や組織文化の問題点を明らかにするとともに、再発防止のための取り組みについて考察します。非常識な行為がなぜ生じるのか、どのように防ぐべきなのかを多角的に検討し、持続可能な企業経営に向けた教訓を提示します。