www.tsr-net.co.jp 【特別レポート】機械学習の手法を用いた、非上場企業の不正会計予測 4-5 minutes 公開日付:2021.08.30 東京商工リサーチ(TSR)は、一橋大学、有限責任あずさ監査法人と共同で、機械学習の手法を用いた非上場企業の会計不正のリスクをスコアリングするモデルの研究成果をまとめ、一橋大学ワーキングペーパー「機械学習手法を用いた不正会計予測:非上場企業データを用いた検討」 として、6月22日に公表しました。 本稿では、ワーキングペーパーの主要部分を解説します。 「企業間取引の円滑な実施」は突き詰めれば、双方の信認をベースに誠実に取引が行われるということに尽きます。それが大きく揺らぐケースの一つとして、上場企業であれば「開示情報の誤り」は、取引金融機関や、実物取引における販売先、仕入先、そして市場からの信認を失いかねない重要なインシデントであります。また、上場・非上場に限らず、企業の開示情報の誤りが企業による何らかの意図のもとで行われた場合は、会計情報に関する不正行為(不正会計)とみなされ、当局からのペナルティが課され、信用の失墜を招き、多くのステークホルダーに多大な影響を与え倒産する場合もあります。 このように、企業を取り巻く広範囲に多大なる負の影響を及ぼす不正会計に対し、これまでその重要性から多くの既存研究で、不正会計の発生パターンに関する理論的な検討が進められ、「不正会計の検知」「予測」を目的とした実証モデルの構築が議論されてきましたが、一方、より実務的な観点からは以下の課題が認識されています。 (1)不正会計の予測モデルの構築にこれまでの研究では利用されていない膨大な情報が存在しており、これらの情報の利用によるモデル精度向上の可能性 (2)大規模なデータと、その処理が得意な機械学習の手法を用いた予測モデル構築が効果的である一方で、データ収集に係るコストの観点から、可能な限り少ない情報をもとにして高精度な予測モデルの構築が求められる これは一見矛盾するようにも見えますが、多数の財務指標、金融機関や取引関係、株主、立地など、企業に関する数多の情報が該当し、これらを予測モデルの構築に用いた方が、より精度高く不正会計が予測できるのではないかという直感的な期待がある一方で、それら膨大な情報の中でも、コス...
企業は社会において経済活動を支え、雇用やサービスを提供する重要な存在です。しかし一方で、不正行為や非常識な対応が発覚すると、その影響は計り知れません。近年では粉飾決算や情報隠ぺい、従業員への不当な扱い、顧客への誠意を欠いた対応など、数々の企業不祥事が報じられてきました。これらの行為は、経営陣の倫理観の欠如やガバナンスの不備、短期的な利益追求への執着などが背景にあるといわれています。 不祥事が一度表面化すると、企業のブランド価値や株価は急落し、取引先や顧客との信頼関係は容易には回復できません。さらに従業員の士気低下や離職の増加といった内部崩壊も引き起こします。社会における企業の責任は単なる利益追求にとどまらず、透明性や誠実さをもって行動することにあります。 本稿では、過去に起きた企業のトラブル事例を振り返り、その原因や組織文化の問題点を明らかにするとともに、再発防止のための取り組みについて考察します。非常識な行為がなぜ生じるのか、どのように防ぐべきなのかを多角的に検討し、持続可能な企業経営に向けた教訓を提示します。